乾癬とは
皮膚が赤くなって盛り上がり、その表面に銀白色のフケのようなものができて、ポロポロと剥がれ落ちるのが特徴の皮膚の病気です。
日本での推定患者数は40万〜50万人であり、性別は2:1で男性に多いのが特徴です。発症年齢は、男性では30歳代、女性では20歳代と50歳代に多いとされ、難治です。
遺伝的な要因と環境の要因が重なることで発症すると言われています。
近年、我が国で患者さんが増加傾向にあるとされ、食生活の欧米化による脂っこい食事やカロリーの高い食事の摂取も発症の環境要因の一つと考えられています。
乾癬患者さんで肥満が多く、肥満が皮膚症状の重症度とも関係すると言われています。
さらに乾癬は心筋梗塞の独立したリスク因子とされ、インスリン抵抗性、高血圧、脂質代謝異常症などの病態を呈するメタボリックシンドロームとの関係も指摘されております。
体重減少で症状が軽快するとも言われております。
関節症性乾癬とは
皮膚の病気である乾癬の症状に、腫れや痛みを伴う「関節炎」が合併した慢性の病気です。
多くの場合は皮膚症状が先行し、皮膚症状が重症であること、頭部、お尻、爪の病変が関節炎合併と関連するといわれております。
主な関節症状は、手足の指の関節の腫れや痛みが見られる末梢関節炎、指全体の腫れや痛みが見られる指趾炎、肘やかかと、足裏に症状がある付着部炎(これらをまとめて末梢性病変と言います)、腰や背中などが特に明け方に痛む脊椎炎、お尻や坐骨が痛くなる仙腸関節炎(これらをまとめて体軸性病変と言います)などに分けられます。
(トルツによる乾癬生関節炎の治療をはじめられる患者さんへ. 患者さん向け資材: 日本イーライリリー株式会社から抜粋)
診断
関節リウマチのような診断に結びつく血液検査はありません。
皮膚症状については身体診察が一番大事ですが、非典型例では乾癬の診断が難しい場合もあります。
経験のある皮膚科医による診断が必要で、診断困難例には皮膚生検が必要なこともあります。
また関節症状も診断が難しく、ぎっくり腰やゴルフ肘、足底腱膜炎などと診断されたり、「リウマチではありませんね、経過観察しましょう」と言われることも珍しくありません。
画像診断は非常に大事となり、関節超音波で付着部炎の所見を認めたり、骨盤のMRIで仙腸関節炎や椎体炎を認めると診断につながります。
これらの関節症状は皮膚科医ではなく、経験豊富なリウマチ科医の出番となります。
つまり経験豊富な皮膚科医とリウマチ科医が共同で診療に当たることが理想的です。
治療
乾癬には以前より光線療法やステロイドやビタミンD3などの塗り薬による治療、ビタミンA誘導体や免疫抑制薬、アプレミラストなどによる内服療法がされてきましたが、最近になり代表的な抗リウマチ薬であるメトトレキサートや、分子標的薬のTYK2阻害薬など内服療法に選択肢が増えました。
さらに治療効果の高い生物学的製剤(バイオ)が登場しております。
バイオでは関節リウマチで高い効果が証明されている抗TNF-α阻害薬をはじめ、抗IL-12/23阻害薬、抗IL-17阻害薬、抗IL-23阻害薬など多彩な薬剤が使用可能であり、治療効果も高く患者さんの満足度も高くなっております。
関節症性乾癬でも古典的な非ステロイド性抗炎症薬や抗リウマチ薬だけではなく、皮膚症状と同様多くのバイオが使用されております。
さらに内服の分子標的薬であるJAK阻害薬も関節症状がある乾癬の患者さんには使用が可能となっております。
またバイオジェネリック=バイオシミラーもこれらの疾患に保険適応となっており、安価に治療を受けられるようになってきました。